“圧力で鍛える”次世代のiPS人工心筋製造法―ヒトiPS細胞由来心筋組織の成熟過程を効率化する新技術―

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公開日

研究者情報

研究者名

Hidetoshi Masumoto 

概要

 理化学研究所(理研)生命機能科学研究センター心臓再生研究チームの升本英利客員主管研究員(京都大学医学部附属病院心臓血管外科特定教授(研究当時)、関西医科大学医学部心臓血管外科学講座学長特命教授)、木村航チームディレクター、東京大学大学院医学系研究科先端循環器医科学講座の野村征太郎特任准教授らの共同研究グループは、ヒトiPS細胞から作製した三次元人工心筋組織(ECT)に対し、「高圧・短時間・間欠的」な圧力刺激を加えることで、心筋組織をより成人の心臓に近い状態へ成熟させられることを明らかにしました。

 本研究成果は、「iPS細胞からつくる心臓組織を鍛えて成熟させる」という新たな概念を示すものであり、再生医療に用いる移植用心筋組織の機能向上だけでなく、実際のヒト心臓により近い薬剤評価系や心疾患モデルの開発につながることが期待されます。

 ヒトiPS細胞由来心筋は、再生医療や創薬研究への応用が期待される一方で、胎児の心筋に近い未熟な性質を持つことが大きな課題でした。本研究では、ECTに対し、独自の「加圧トレーニング」を行いました。その結果、心筋細胞が一定方向に整列し、エネルギーを産生するミトコンドリア量が増加しました。また拍動の向上とともに、心拍数が上昇した際に収縮力が高まる成人心筋に特徴的な性質の獲得が確認できました。

 本研究成果は、科学雑誌「Stem Cell Reports」オンライン版(7月23日付:日本時間7月24日)に掲載されました。

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医療応用に向け、より高性能のiPS心筋を実現する加圧トレーニング 

研究者のコメント

「ヒトiPS細胞から心筋細胞をつくる技術は大きく進歩しましたが、『成人の心臓らしい機能を持たせること』は長年の課題でした。私たちは、発生中の心臓や実際の心臓が常に圧力変化を受けていることに着目し、『圧力そのものが心筋を成熟させるのではないか』と考えました。

生命機能科学研究センター臨床橋渡しプログラムにおいて研究リーダーとして研究を始めた当初は、どの程度の圧力を、どのくらいの時間与えればよいのかまったく分かりませんでした。試行錯誤の結果、意外にも『高い圧力を短時間だけ与える』条件が最も効果的であることを見いだしました。わずか3時間のトレーニングで人工心筋組織が大きく変化したときは、研究チーム全員が驚きました。

今回の成果は、iPS細胞から作製した人工心筋組織を『鍛えて成熟させる』という新しい考え方を示したものです。将来的には、心不全に対する再生医療だけでなく、新しい薬の開発や安全性評価にも役立つ技術へ発展させたいと考えています。」(升本英利)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2026.103019

【書誌情報】
Wusiman Maihemuti, Kozue Murata, Takahiro Jimba, Jun Iida, Keisuke Hakamada, Akane Sakaguchi, Mosha Abulaiti, Yuichi Saito, Laura Yuriko González-Teshima, Satoshi Takatori, Takahiro Kenmotsu, Kenichi Yoshikawa, Kenji Minatoya, Seitaro Nomura, Wataru Kimura, Hidetoshi Masumoto (2026). High and intermittent hydrostatic pressure promotes maturation of engineered cardiac tissues derived from human pluripotent stem cells. Stem Cell Reports, 103019.

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